IT業界だから安心?

採用面接をしていると、業界を変えて入社を希望する人から「これからはIT業界が伸びると思いまして…」という志望動機をよく耳にします。まぁ、確かに業界を変えてIT業界に足を踏み込もうとする動機はそれくらいしかないと思いますが…。他にも「個人的に行っているYouTubeアカウントのアクセス解析をしているうちにWebマーケティングに興味を持ちまして…」という志望動機もあります。まぁ、今の私にはこれが最も耳にする志望動機の1,2位ですね。

しかし、業界が伸びるからといって、それに合わせて自分も伸びるとは限りません。日進月歩のIT業界で、同じように自分も進歩できるほうが難しいわけで、むしろ付いていけなくなる可能性だってあります。「CTR」や「CVR」という言葉も知らなければ「SEO」「Web3.0」という言葉さえも知らない中で、「これからはITが伸びる」という動機一本で市場の波に自分が居続けられるという根拠は持ちづらいと思うのです…。
自分の社会人人生が40年あったとして、デジタルとかITとか言えども、40年以内に紙媒体が無くなるかさえも分からないですし…むしろアナログの世界にITを持ち込むような仕事をライフワークにしたほうが、キャリア形成においては建設的なのではないか、とさえ思ってしまいます。

そんな中、先日Twitterで約3,700人のリストラ(解雇)をし、今度は去る11月9日に(Facebookに代表される)メタが約1万1,000人(全従業員の訳13%)を解雇したというのが話題になりました。いずれもグローバルでのリストラとはいえ、大鉈を振るう相当数かと思います。というわけで、この辺について徒然なるままに書いてみようかと思います。

メタとTwitterのリストラ背景を考える

まず、今回のメタの大幅なリストラに関して、東洋経済オンラインの記事によれば、減少傾向にある売上に対して研究開発費や一般管理費に値する人件費が嵩んでおり、利益が逼迫していることが今回の大きな背景になっているとのことでした。

「研究開発費(Research and development)」「一般管理費(General and administrative)」がここ2年で大きく膨れ上がっていることがわかる。これは収益に対してコストが増加する=負担が増えるということだ。したがって利益減の要因になる。

引用)東洋経済オンラインより一部抜粋

 

FacebookというSNSプラットフォームにおいて重要なのはユーザーの伸び率やアクティブ率かと思います。しかしながら、実在する人物によるよりリアルなアカウントを前提としているFacebookの特性上、これ以上のユーザー増はなかなか望めないのでは?と思います。リテラシーを含めて考えるともう頭打ちになっているのではないでしょうか。しかも、リアルでも繋がっている友だちが多い故、アカウントをリセットすることもできず、都合が悪くなるとログインしないようにする…という方法しかなくなります。これは私の体感値に過ぎませんが、若年層がSNSに参入することによるユーザー増加よりも、こういった休眠層の増加や高齢化によるSNS離れの増加の方が加速化しているようにも感じます。そうなると、Facebookに広告投下し続けるROASも伸び悩むわけで…自ずとFacebookの広告収益も下がってしまう印象を受けます。
Instagramだってあるものの、こういう状況から脱却すべく社名をメタに変え、メタバースという仮想空間に投資しているのが今のメタかと思います。しかし、まだ市場全体が追いついていないので、短期的な利益確保に向けて(結果が出ていない)人件費を削減したのではないでしょうか。
 

一方でTwitterですが、こちらはアカウントやアクティブ率の伸びをそこまで気にする必要は無さそうです。フォロワーとの人間関係が嫌になったらリセットできますし、何より1人でいくつもアカウントを保有することも可能です。しかし、何よりマネタイズが…(笑)。横のつながりが乏しいが故にお金を生みづらいんですよね。ですので投げ銭系をしようが、Clubhouse系をしようが、Twitter社側のマネタイズは難しい状況で、それでも一応細かく広告収益を重ねているというのが現状なのではないでしょうか。ですので、これは私の解釈ではありますが、Twitter社の場合は中期的に見て人件費を抑えた(=リストラした)という印象を受けます。何よりイーロン・マスク氏が就任して最初に目についた点だと思いますので、細かな理屈云々ではなく、誰がどう見ても分かりやすい課題だったのではないでしょうか。

これからのテック企業において重要な人物

というわけで、冒頭の話に戻りますが、今回のメタやTwitterの実情を察すると、「これからのIT業界は伸びる」という理由だけで業界に足を踏み入れたら、それが大きな過ちになるかもしれません。大手のテック企業に入社したところで大企業病が蔓延し、いつ経営判断でバッサリいかれるか分かりません。かといってベンチャー系のテック企業は玉石混交のテクノロジーがちゃんぽん状態ですので、自分の将来どころか会社の将来さえもままならない状況です。少なくとも大手にせよベンチャーにせよ「これからはIT」という志望動機で入社希望する人を容易には受け入れられなくなってくるのではないでしょうか。

というわけで、私が思うこれからのテック企業において重宝する人物は以下の2パターンかと思います。
 

IT(ビジネス)スキルが高い

当然ですね。経験者です。退職理由にもよりますが、IT業界のビジネスやノウハウを分かっている人は即戦力ですので欲しい人材ですよね。ましてやメタやTwitterを解雇された人物が世界中にいるわけですから、この人材の(デキるでデキないを吟味した上で)動向が気になるところではございます。少なくとも、メタやTwitterを知る大手テック企業のエバンジェリストとして、是非とも迎え入れたい人材になるかもしれません。
また、IT業界が分からずともエンジニアとしての勉強を重ねており、才覚があるのであれば、それも当然即戦力です。いずれ若くて優秀な人材に劣る時代が来るかもしれませんが、少なくともそれまでの期間は企業として欲しい人材ですし、当人においても入社後の処世次第で成功していくかと思います。
 

人間性が高い

私が採用者側であれば、即戦的なスキルが無い限り、これ一択です。
ITやAI等のテクノロジーやエンジニア能力が上がれば上がるほど、それらを上手に管理する人間性が重要になります。現場スキルの高い人をどのようにディレクションし、マネジメントしていけるか——むしろこの人間性が高い人は、一度企業に入社すれば、定年まで重宝される人材になるのではないでしょうか。私はマーケティング業界に23年、うちIT業界に18年いますが、年々この人間性がいかに重要かを感じております。業界や市場が成長期にあればあるほど、地に足を付けて、多くの技術者が「この人の言うことなら聞く」と思われる人材が大切なんだと思います。実は、私もどちらかというと職人気質なので、このように高い人間性を持つ人が近くにいるだけで非常に助かっています。

IT業界にいるからといって安心する勿れ

読者の方々におきましては、ここまでお付き合いいただき、ありがとうございます。ここまでお読みいただければもうお分かりいただけるかと思います。IT業界やテック企業だからといって「これから伸びる」とは限らないのです。ましてや当人がこれから伸びるとか、安泰だとかは言語道断というわけなのです。

IT業界だからこそ常に自己研鑽しておかないと、いつか足下を掬われる日が来てしまいますよ。

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