先日、Googleの検索ランキングシステムを形成する要素の一部のドキュメントが漏洩される事件(?)が起こりました。どうやら独禁法裁判における証拠資料の際にGoogleの内部エンジニアが使用した検索ランキングシステムのドキュメントが流出してしまったようで(その内容を分析して示した記事に関しては英文を和訳化している最中ですが)、これを機に、あらためてNavboostとGlueに注目が集まっています。他にもサイトのオーソリティ性等もありますが、これはまた別途ご紹介するとして…今回はこのNavboostとGlueについてご紹介したいと思います。
Navboostとは?
難しい話を抜きにすると、検索結果画面(SERPs)からのクリック数やクリック率が良いサイトページは検索上位になりやすい、という話です。難しい言い方をすると、Googleのコアアルゴリズムの中には、クリックをシグナル化したモジュールがあり、それらを管理するシステムがNavboost(ナヴブースト)というコードネームを持っているようです。
つまり、Googleのランキング哲学のひとつとして「検索結果画面からクリックされやすいサイトページは既に人気や信用性、欲しい情報を満たしてくれる可能性が高いとユーザーは思うだろうし、それはGoogleの検索ランキングシステムのひとつとして機能しても良いんじゃない?」という考えがあるわけです。Googleは今までユーザーインタラクションについては誤魔化していましたが、最近ユーザーインタラクションもGoogleにとっては重要な研究材料だ的な言い方をしていました。
そして、2023年11月の検索品質評価ガイドラインにNeeds Metという概念が導入されるようになりました。これによって私もいよいよ、以下の点に注意しましょう、という発言を繰り返すようになりました。
- クリック率を気にしましょう。
- クエリの種類や検索ボリュームによって相場となるクリック率を(我流で良いので)把握しましょう。
- 表示ブロック全てを気にしましょう。
- Faviconをしっかり作りましょう。
- タイトルはスマホでもPCでも切れずに表記されていますか?
- 説明文はスマホでもPCでも切れずに表記されていますか?
- クエリを意識して、meta descriptionが優先表示される設計にし、能動的に説明文を作りましょう。
- 考えられる構造化データマークアップは全て行い、リッチリザルト化を狙いましょう。
- 信用性を得やすい単語をタイトルや説明文に入れ込みましょう(ブランド名や専門家)。
- 結論ファーストな言い回しにしましょう(煽り文句は“釣り”だと思われてクリックされない)。
- 競合の表示ブロックを調査・分析し、常時比較しましょう。
これらも本質的ではなく、良質なコンテンツページであることを前提としたテクニックに過ぎませんが…重要ですね。
Glueとは?
Glueというのは、分かりにくいのですが、検索結果画面上における検索ユーザーの行動――スクロールや他のタグへの動き、特殊な表示枠やホバー(マウス移動)、デバイスやロケーション等を見て検索ランキングを見直すシステムのようです。これもコードネーム化されてGlue(和訳としては、糊付けとか接着とかのニュアンス)と命名されているようです。
つまり、検索結果画面のユーザー動態によって、あまりにもスクロールばかりされる検索結果であれば上位表示サイトページ群が検索心理に合っていない、ということが分かりますし、とりあえず目が向く先(ホバー)がどこかによって、どういう情報を欲しているのかもシグナル化できるというわけですね。このシステムは、もともとGoogleは検索品質向上のために使っていたことは安易に想像できますし、特定のサイトページに直接作用するシステムでもないと思いますのでそこまでセンシティブになる必要はないと思います。
とはいえ、キーワード(クエリ)を分析する上で、検索心理(インテント)を仮説付けることがどれだけ重要か、ということを裏付けてくれる機能ですね。SEOプランニング時に重要な考察ステップだと思います。
やることは同じ:良いコンテンツとその演出
私は取引先ご担当者様に何度も言ってきていますが、結局SEOは「良いコンテンツ(サービス)を“作成”して、その良質であることをいかに100%“演出”できるか」ということです。
“作成”という部分で言えば、コンテンツが良くてもその後の事業サービスが悪ければ長いことSEOで成功することは難しいと思います。時には事業自体も見直さなければなりません。どこで検索しても上位表示されるコンテンツページを持つサイトの事業サービスが東京だけ…というのであれば、東京付近の検索地でしか上位表示しないかもしれません。そうならないためにはサービスの全国展開を視野に入れ、事業計画を考察しなければならないでしょう。
また、“演出”というのはSEOテクニックです。コーディングによって表示速度を上げたり、構造化データでマークアップしたり、内部リンクやパンくず、サイト構造を見やすく分かりやすくしなければなりません。そうやってGooglebotにもユーザーにも分かりやすくすることで、本来持っている良質なコンテンツ(サービス)をしっかり理解してもらえるようになります。せっかく良質なコンテンツでも、見づらかったり分かりづらかったりしたら読んでくれませんから。
“演出”ばかりが先行して、本質的なSEOに目を向けていないサイトもいまだにありますが、敢えて言うなら、この「良いコンテンツ(サービス)を“作成”して、その良質であることをいかに100%“演出”できるか」を念頭にNavboost等を意識しても良いかもしれませんね。