Door in the faceとFoot in the door

たまには、行動心理学を使った営業テクニックについてご紹介します。相手がそうだと分かっていても使える営業手法のひとつです。今回は2つの手法として「Door in the face(ドア・イン・ザ・フェイス):門前払い」と「Foot in the door(フット・イン・ザ・ドア):入口への踏み入れ」についてです。費用面等の交渉において役立つかもしれませんが、他にも様々な方法が考えられますので例を挙げながらご説明します。

Door in the faceとは

行動心理学用語のひとつですが、ビジネス用語として広く知られています。文字通り「ドアから顔を出す」や「門前払い」というような意味が含まれています。最初からいきなり大きな提案や依頼をし、相手の断りを受けてから、小さな提案や依頼をする手法です。これは、提案(依頼)者が大きな提案や依頼を通常感覚で行うのですが、相手に断られることで「それじゃあ…」というイメージで譲歩して次の提案や依頼をする形になります。その譲歩した提案や依頼に対して、相手側は無意識的に小さな罪悪感と次は報いたいという心理(返報)が働きます。それによって、その後の提案や依頼が成立しやすくなるというわけです。
以下にいくつか例を挙げましょう。
 

  1. 話し手「この中古車を100万円でいかがでしょうか?」
  2. 受け手「えっ、そんなにお金ないよ!」
  3. 話し手「そうですか…では、この中古車70万円にしますのでどうでしょう?」
  4. 受け手「うーん、70万円なら。」

 

  1. 話し手「結婚してください」
  2. 受け手「えっ、いきなりできません!」
  3. 話し手「そうですか…では、せめてLINE交換でも」
  4. 受け手「うーん、LINEなら。」

 

  1. 話し手「御社のWebサイトをフルリニューアルしてCVRを3倍にしましょう!」
  2. 受け手「いやいや、そんなに大掛かりなこといきなりできませんよ」
  3. 話し手「そうですか…では、せめてこのページだけでも修正させていただけませんか?」
  4. 受け手「うーん、では、まずはそのページ修正くらいからはじめましょう。」

 
要は、最初に面食らう程の提案や依頼をして、その後本来決めていた落としどころを妥協案的に見せる手法ですね。似たようなケースですと、例えばギターを買いに行く時に、いきなりビンテージ商品を扱っている凄い楽器屋に行き、何百万円も何千万円もするギターを見てばかりいると、その後の普通のギターが20万円でも「安い!」と思ってしまうのに似ていますよね。しかし、この場合はただ高いものばかり見ていて感覚が麻痺してしまった結果の話ですので、今回の行動心理学として対人に使うものとは異なりますので、ご注意ください。
Door in the faceとは、あくまでも返報する心理を頼りに、対人に仕掛けるものです。

Foot in the doorとは

これも行動心理学用語のひとつとして広く知られています。文字通りで訳すと「ドアに足を踏み込む」という意味が含まれています。最初からいきなり大きな提案や依頼するのではなく、小さな提案や依頼を重ねていくことで最終的に大きな提案や依頼を受け入れさせる手法です。済し崩し的にと言うべきか、段階的にと言うべきか…要はハードルを下げて参入しやすくし、気が付けば少しずつ高いハードルをクリアしているという感じでしょうか。実は、これ会話だけではなく、色々な手法に活かされているんです。
以下にいくつか例を挙げます。
 

  1. 話し手「この中古車、30万円でいかがでしょう?」
  2. 受け手「それくらいなら予算内なので大丈夫です。」
  3. 話し手「せっかくなので綺麗な状態にしたいのでクリーニング代がプラスで5万円ですがどうしましょう?」
  4. 受け手「うーん、まぁ、どうせ綺麗にしなきゃいけないし、では35万円で。」

 
これはあくまでも会話の例ですが、以下は実際にFoot in the doorを利用した例です。
 

  • 2時間20,000円のエステがリリースするトライアル60分3,000円コース
  • 1ヶ月1,000円のサブスク動画配信サービスが行う初月会費無料
  • ネットプロモーション等に使う「資料請求」等のマイクロコンバージョン設定

 
世の中、Foot in the doorで溢れてますよね。好きな人をデートに誘うのも、まずは連絡先を自然な形で聞き出して…みたいに少しずつ進めると思いますが、まさにそれもFoot in the doorです。心理的ハードルを下げるために、誰しも無意識に行っているケースが多いと思います。

改めて知る営業テクニック

競争率の高い市場の中だったり、商品価値を見出しにくい商品カテゴリ営業したりしている場合、売上や受注は営業パーソンとなる個人に強く依存します。つまり、サービスの差別性が無い商品ほど営業担当の個人テクニックや営業手法が重要になるわけです。その場合、営業先の首を縦に振るためには様々な心理テクニックや時間、戦略を作り、契約までのストーリーを立てることは必須です。会話や相槌ひとつとっても、その中には細かなコミュニケーションテクニックや駆け引きが存在するわけですね。そして、そういうのを頭ではなく、本能的且つ自然にできる人ほど、優れた営業パーソンになりやすいわけです。

とはいえ、本能的にできない人がほとんどだと思いますので、そういう人はこうした行動心理学を学び、頭で出来るようになっていくことをおすすめします。今回の2つに関しては、本当にコミュニケーションの一瞬一瞬を大事にしたいと思えば、必ずできる手法だと思いますよ。

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