問われるウェブの編集部

私はもともと紙の世界(雑誌メディア)における広告会社に在籍していました。ですので、雑誌の編集部の方々ともお話しする機会が多くありましたが、彼らの編集に関する哲学や思いは、一度聞き出すと話が止まらなくなるくらい溢れ出ています。そんな思いがインターネットの世界にあっても良いのではないかと考え、ふわふわっと書き留めておきます。

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渇望の編集部

私はかねてより「WEBに編集力を」ということを言い続けています。雑誌が売れていた2000年前後より急速にインターネット及びインターネットメディアが活性化し、ほどなくして“情報のスピード”だけを売りにしていた雑誌の発行部数が急降下し、Yahoo!等のインターネットメディアが台頭しました。“情報のスピード”だけに依存していた週刊誌は廃刊が続き、雑誌は“クラスメディア”と呼ばれるようなものばかりが生き残りました。

しかし、取って代わったインターネットメディアも“情報のスピード力”だけですから、そこに編集力はなく、事実の羅列や現象を羅列しただけの文字が並ぶ程度です。空白を意識したようなページ構成や写真配置、日本語の美しさやボキャブラリーの豊富さを活かした文章構成はありません。ですので、私はずっと「WEBにも編集力があったらなぁ」と渇望していました。いわゆる従来からイメージするような“編集部”というやつです。編集ライターが記事を上げて、編集長が判断し、メディアとしてのアイデンティティやガバナンス、品位を意識して校正するような、紙の世界にある編集部です。

でも私の渇望はただのメディアに対する個人的な思いに過ぎず…実際に業界に席を置いていると分かりますが、インターネットメディアに編集ライターを抱えることによる人件費の採算性が非常に難しいのです。基本的には情報収集だけが目的の読者(ユーザー)傾向にあり、メディアに対して「なんか好き」という感情が湧かないのがインターネットメディアです。もちろん無料媒体がほとんどですし。

ただ、そんな中微妙に編集部が出来そうな事案がございましたのでご紹介します。

Facebookに編集部!?

インターネットメディアの中でもとりわけ編集部と縁遠いイメージのCGMやSNSですが、WIREDの編集記事によるとFacebookが人材募集をしているようです。

米国大統領選挙でドナルド・トランプ候補がまさかの勝利を遂げたあと、フェイスブックやグーグルやツイッターなどは、ソーシャルメディアへの虚偽のニュース(フェイクニュース)やファシスト的プロパガンダの流入を食い止められなかったことについて、大きな批判に直面している。
こうした批判を受けてフェイスブックでは、各メディア組織と協力して仕事をする「経験豊富なニュース・エグゼクティヴ」を雇用しようとしている。
引用)WIRED.jp

奇しくもFacebook内に流れるニュースの真贋を判断する(できる)部署(人)を新しく設置するようですが、編集部という位置付けではないようです。

フェイスブックは、ニュース組織として見られることを否定し続けており、今回の新しい職種の説明でも「編集者」という言葉を避けている。
引用)WIRED.jp

動機はどうあれ編集部が必要

このFacebookの話は私が渇望するような形態ではないと思いますが、先日のキュレーション騒動等を考えますと、やはりそろそろインターネット業界にも編集部が必要なのではないかと改めて思っていまします。

インターネットメディアにおきましても、その編集記事が、キュレーションであろうが独自取材であろうが独自見解であろうが、メディアとしてしっかりとアイデンティティを持って世の中に発信したいと思い、また発信すべきだと社会的大義を持てるかどうか。こういう判断が出来る部署が必要ですよね。

同時に、誤字脱字もなくしっかりと日本語を成している文章力を持った編集記事を書けるライターの部署が必要ですよね…つまり編集部が。

今まで節操無く“情報を早く出したモノ勝ち”だったインターネットメディアが、今回のキュレーション騒動をきっかけに少しずつ変化してくれることを(他力本願で)願っています(笑)。

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