生成AIと人間

昨今、AI(Artificial Intelligence:人工知能)による文章や動画、画像の生成分野が活発化しており、特にLLM(Large Language Models:大規模言語モデル)であるOpenAIのGPT、GoogleのPaLM 2、MetaのLlama 2が「我先にマジョリティ市場を制覇する」と言わんばかりに注力しています。

並行して、生成AIの開発における理念や倫理についても各社明言しており、決してAIが地球の独占的支配権を取得しないよう、細心の注意を払いながら遂行しており、社会貢献と社会破壊の境界線を非常に意識していることも窺えます。同時に生成AIを使う我々も、機密情報にAIが触れたり記憶したりすることについて、その是非を契約書として交わしながら開発会社との提携を進めています。

とはいえ、実際の社会現場においては「AIが人間の仕事を奪う」「AIで仕事内容が変わる」と思っており、資本主義国家であれば、民間企業としてAIコストと人件費を天秤に乗せ、効率化と抑制する原価を計らなくてはなりません。

ということで、生成AIが発展すれば、この先どうなっていくのか…について、私の推論をご紹介しておきたいと思います。私は「自社くらいAIを活用しても良いだろう」という民間企業経営者の増加によってAIが人間の仕事を奪う、という意見寄りです。陰謀論とかそういう話ではなく、そういう考えを持つことで逆に人間ができる未来を予測する、という建設的な姿勢です。

生成AIの成長性

まず、Web業界のコンテンツライティング業務内に関する生成AI(以下:AI)の能力について、(あくまで私の身の回りで)一般的にビジネス現場で言われていたり個人が想像していたりしていることについてご紹介します。2つあります。

1つ目は“本気で文章を作成する人間にAIは勝てない”ということです。
この意見に関しては、あくまでも現在のAIは既にWeb上に公開されている情報をもとにキュレーション(収集と編纂)した概論を生成しているに過ぎず、一次情報を作り出すことが出来ない以上、ポジショントーク(立場を明確にした上で持つ意見)もない、という根拠から言われているようです。確かにAIは、これまで多くの人々がライティングし、世界中にテーマに合わせた論や意見、感想、サービスが存在することで、そのインフラを整備し文章化したに過ぎません。だから、それらのインフラも多角的に理解したうえで、持論を展開する人間の文章力には勝てないかもしれません。同様に文章の表現力や世界観を独特に持ち合わせ、個性を出すことで芸術性や読みやすさを追求できるのは今のところ人間のほうかもしれません。AIは情報を均して全ての人々が画一的に情報理解できることを目的としている以上、エッジの効いた文章を作り出すことはせず、また開発時に公序良俗に反する情報や差別的要素を除外してアウトプットさせている以上、それらを踏まえた上で良質な領域の文章を作成することはできないかもしれません。これらが本気で文章を作成する人間にAIは勝てないと言われる所以かと思います。
 

2つ目は“AIは無から有となるアイデアを作れない”ということです。
AIはWeb上の情報をもとに文章や画像、動画を生成します。そういう意味では文章や画像、動画生成自体が有を作り出していることになりますが、ここはそういう意味ではありません。例えば全く新しいビジネスやスキーム、画期的なアイデア等、欲しい情報分野内だけで生成するのではなく、欲しい情報分野であっても全く関係ないところから当てはめて今までに無かった考えに辿り着いたり、軸を跨いで捉えるようなアイデアを指します。
現時点のAIは飽くまでも統計処理による自動学習がメインで、インプットありきのアウトプットです。ですので、無から有を生み出すことはできないのではないか、という意見があり、ここが人間とは違っており、人間の能力のほうが高いと言われている所以かと思います。
 

この2つの見解から「人間の仕事や業務、人生をAIが侵すことは無い」という意見が多いのではないでしょうか。でも、私はそう思っていません。

ビジネス領域でこの2点に関してAIは人間を上回る

さて前述のとおり2つの意見から人間の優位性をご紹介しましたが、ビジネスにおいてで述べますと、残念ながら既に1つ目の論は破綻していると私は思っています。理由は簡単です。ビジネスにおいては“人間は本気で文章を作成していられない”からです。ビジネスにおけるライティング目的は、Webサイトへの流入や情報提供だと思います。そしてそのライティング内容は「どこよりも広く深い情報」を意識していると思います。一般的なWebライターが文章を作成する上で、ビジネスとして成立する取引額はいくらでしょう。文字単価で計算している人が多いと思いますので、その理論でご紹介しますと1文字あたり2円~4円が相場です。5,000文字で1ページだとすると、1ページ作るのに10,000円~20,000円の報酬を得るわけです。一般的なWebライターはそれだけで仕事を成立させたい場合、月収40万円は欲しいとして(日本人の平均年収を12ヶ月で割りました)、比較的報酬額が高い案件(文字単価4円)のみで仕事をするなら、月間20ページ(100,000文字)は書く必要がありますよね。でもこの20ページは同じ内容とは限らず、SEO上意識するキーワードやテーマ、付随する企業のサービスや背景、業界知識が必要になるわけです。それらの学習コスト(時間)を使って毎日質の高い1ページを作成するって…非常に大変ですよね。年間240ページにも渡るテーマや知識を得ながら来る日も来る日もライティングをするのです。しかも、ビジネスである以上締め切りが存在しており、決して毎月20ページの締切日が分散しているわけではありません。日によっては1日で2ページや3ページ納品しなければならない時もあります。

それでも人間は常に高品質な記事を作成し続けることができるでしょうか。
効率性や勤続疲労を考えても明らかに品質は下落するでしょうし、ビジネス上求められている内容が70点であれば71点の品質で良いわけですので、毎回本気で作成する必要がないのです。そもそも100点満点の記事を書けるライターであることが前提ですし、計算して71点の記事が書けるわけではありませんよね。対して、AIはどうでしょう?そもそも効率化を追求した設計をされていて勤続疲労もしません。常に100点を目指した記事です。ただ、この100点が満点ではないだけです。

であれば、AIに満点となる100点を取らせるプロンプトを追求するか、インプットを追求すれば良いわけで…。私の持論としてはむしろ“本気で文章を作成するAIに人間は勝てない”と思っています。
 

そして、2つ目の論(“AIは無から有となるアイデアを作れない”)ですが、これはインプットの差だと思っています。人間の脳は1人1つですので、大きな引き出しがひとつあるイメージです。しかしAIは様々なアルゴリズムで形成されていますので、小さな引き出しが数多くあるイメージです。AIにおいては、この引き出しの大きさがまだ(Web上にある情報のインプットだけですので)小さいだけだと思います。数多くの引き出しを1つにまとめる頭脳があれば軸や分野を超えて思考できるようになり、結果的に無から有を生み出せる力が身につくと思っています。
そもそも人間だって、生まれてからずっと何もない部屋に閉じ込められていれば何のアイデアも出てこないし、そもそも思考もしないと思います。五感すら定かではないと思います。しかし、人生を過ごす中で色々なシチュエーションを経験したり教育を受けたり脳に刷り込まれたりすることで、無意識的にデータベースが出来上がり、パッと出のアイデアが生まれたりするのではないでしょうか。AIも同じです。まだ生まれて数年程度です。これからもっともっと膨大な情報をインプットすることで人間と同じ経験を味わうことができると思います。むしろ人間と同じ経験を人間の人生以上のインプットスピードで成し得ると思います。

人間が生活している中で、1分間かけて1つのシチュエーションを記憶したとしたら、1日16時間記憶するとしても960個のシチュエーションです。これを毎日続けているのが人間です。対してAIは960個のシチュエーションをインプット処理するのに16時間もかかるでしょうか。おそらく数分なのではないでしょうか。

人間がパッと出のアイデアを生み出すことが出来る年齢を12歳とします。つまり12年間の蓄積でアイデアを生むことができるということです。AIが12歳のアイデアを生み出すのに12年間かかるでしょうか。おそらく1ヶ月もかからないのではないでしょうか。

こういったことからも私は必ず近い将来、“AIは無から有となるアイデアを作れない”という状態から脱却すると思っています。

真っ先に排斥されるのはWeb業界?

現在のWeb業界の主な目的は、なんだかんだ言って結局“インフラの最適化”だと思っています。情報の整理や購入等のビジネス整理、CPCやCPAの最適化、ニーズとサービスの最適化、マッチングの最適化です。そしてWeb業界が他の業界と明らかに違うこととして、極論すると、人間が使う箇所は頭とキーボードを打つ指先だけだということです。

インフラの最適化と頭とキーボード…これ既にAIで出来てしまいますよね。つまり、AIの成長によって真っ先に職を失うのはWeb業界ではないでしょうか。農業とか紙媒体とか色々なアナログ業界を衰退市場として捉える人がおり「仕事をするならWebやIT」と考える人が多いですが、皮肉なことに成長市場こそ最も人間の仕事が少なそうに感じます。

今後Web業界としてどうあるべきか

AIを使ったビジネスを追求し続け、開発し続け、マーケティングし続けることで業界に人間が生き残れると思います。逆に言えば、AIを使ったビジネスに疎く、新規事業やマネタイズ、マーケティングができない人間は淘汰されるような…。色々書いておきながら最後がざっくりしていて申し訳ございません。あんまりノアの箱舟的な言い方をしたくなくて…。とはいえ、検索慣れしていない人がSEOを考えられないように、プロンプト慣れしていないとAIを考えられないと思いますので、何かしらのAIには今のうちから携わっておくと良いでしょう。また「他より悪くなければ良い」という考えから「他より先んじていなければならない」という考え方にシフトしていかないと、逆に生き残れないと思います。

じゃあ、どういう働き方やWebサイトの在り方が考えられるか…についてはまた個別でご相談ください。Webサイトはもはやオウンドメディアの最適化だけではなく、ユーザーとのインターネットコミュニケーション全てをデザインしていかなければならない時代に来ていると思います。つまり、広告はこの会社に…SEOはこの会社に…サイト運用はこの会社に…マイビジネスはこの会社に…SNSはこの会社に…というやり方ではないと思います。一人ひとりがCMOとなり、ROIを計算していかなければならないと思っている次第です。

現在、そんなプロットの開発を進めていますのでご興味がございましたら是非お問い合わせください♪
ではでは~!

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