ChatGPT等の登場により「Googleに緊急事態!?」等という声が世界的に多く上がっていた中、Googleは米国現地時間2月6日、Google検索にAIをテスト導入したことをGoogle兼アルファベットのCEOであるSundar Pichai氏自らが発表しました。Google検索の一部テストユーザーに導入したAIのコードネームは「Bard」といい、これは2021年に発表した対話型AIシステムである「LaMDA」の簡易版とのことです。まだテスト段階ではありますが、早々にフィードバック等の収集と改善を行い、一般公開に向けて動くのではないでしょうか。というわけで、この辺の情報はたくさんございますので、ざっくり整理しながらBardについてご紹介していきたいと思います。
- ①Bard発表時のSundar Pichai氏のツイート
- Bard発表時のThe Keyword記事とそれを和訳した②Google Japan Blog
- Bard発表の翌日に発表した③AI生成コンテンツに関するGoogle検索のガイダンス記事(日本語)
- さらにその翌日にGoogleがパリで発表した内容のツイートとそのフォローアップとなるThe Keyword記事
今回のこのブログでは、上記①~③までをフォーカスしてご紹介します。以降のツイートと記事に関しては別記事でご紹介しています。
Bard発表時のSundar Pichai氏のツイート
まずは、Bard発表時のSundar Pichai氏のツイートを和訳してご紹介します。
1/ In 2021, we shared next-gen language + conversation capabilities powered by our Language Model for Dialogue Applications (LaMDA). Coming soon: Bard, a new experimental conversational #GoogleAI service powered by LaMDA. https://t.co/cYo6iYdmQ1
— Sundar Pichai (@sundarpichai) February 6, 2023
引用)@sundarpichaiより和訳
2/ Bard seeks to combine the breadth of the world's knowledge with the power, intelligence, and creativity of our large language models. It draws on information from the web to provide fresh, high-quality responses. Today we're opening Bard up to trusted external testers. pic.twitter.com/QPy5BcERd6
— Sundar Pichai (@sundarpichai) February 6, 2023
引用)@sundarpichaiより和訳
3/ We'll combine their feedback with our own internal testing to make sure Bard's responses meet our high bar for quality, safety, and groundedness and we will make it more widely available in coming weeks. It's early, we will launch, iterate and make it better.
— Sundar Pichai (@sundarpichai) February 6, 2023
引用)@sundarpichaiより和訳
4/ As people turn to Google for deeper insights and understanding, AI can help us get to the heart of what they're looking for. We're starting with AI-powered features in Search that distill complex info into easy-to-digest formats so you can see the big picture then explore more pic.twitter.com/BxSsoTZsrp
— Sundar Pichai (@sundarpichai) February 6, 2023
引用)@sundarpichaiより和訳
5/ Developers can soon try our Generative Language API, initially powered by LaMDA with a range of models to follow. Over time, our goal is to create a set of tools and APIs that will make it easy for others to build more innovative applications with AI.
— Sundar Pichai (@sundarpichai) February 6, 2023
引用)@sundarpichaiより和訳
この一連のツイート内容で全体像が理解できますね。まず、LaMDA(Language Model for Dialogue Applications)という対話アプリケーション用言語モデルの簡易版であるBardというAIをリリース予定とのことです。そのリリースというのは、Google検索に導入することを指しており、既に現在一部のテストユーザーに導入した検索結果を提供しているとのことです。このテストと検証と改善を繰り返し、今後数週間で広くリリースする予定とのことです。この時点で広いリリースの対象言語が英語圏だけなのか日本語も対象になるのか分かりません。Bardを使った検索結果は簡潔に概要を伝えつつ、もっと詳しく知りたい人にも使いやすいような表示方法を考察中とのことです。さらに、LaMDAを活かした言語生成APIもテスト利用を開始しており、今後AI関連のAPI公開によって誰もがAIを使ったサービス提供ができるよう支援していくとのことです。
いやぁ…特に最後のツイートがなかなか…つまりGoogleはAIを使ったシステムをAPIとして広く提供することで、競合他社のAI開発ビジネスを成立させないようにしているって感じですね。「GoogleのAIシステムAPIをパッケージとして使えば、開発費とか余計なコストかけずに済むじゃん」と企業に思わせるってことですね、きっと。
Google Japan Blogの内容
Sundar Pichai氏のツイートと同時にThe Keywordの記事が公開されましたが、ほぼ同時にGoogle Japan Blogで和訳版が公開されました。記事内ではこれまでのAI開発の歩みや背景、BardのことをLaMDAの軽量Ver.であると説明、他にもBERTやMUMの上にLaMDA、PaLM、Imagen、MusicLM などの最新AIテクノロジーが成り立っていると説明されています。
その中でも気になるのがBardによる検索結果の見え方です。これはThe Keywordに掲載されている画像が見やすいのでご紹介しておきます。
引用)The Keyword
Bardによる回答に関しては、ダイレクトアンサー枠みたいな形で表示されている印象ですね。その後に「Read more」と表示され、カルーセル形式で各記事が紹介されていますが、これはただ一般的な検索結果に繋がっているだけかと思われます。Bardは、強調スニペットのように特定のWebサイトページに記述されているものを抽出して紹介するわけではなく、Webサイト内に存在するあらゆる情報や断片的内容をまとめてから体系立てて回答するものですので、引用元は表示されません。
他にも開発者向けのAPI各種についても触れていますが、詳細は近いうちに発表予定とのことです。
AI生成コンテンツに関するGoogle検索のガイダンス
Bard発表の翌日に、AI生成によるコンテンツに関するGoogleのポリシー的な内容が発表されました。こちらもSearch Central Blogで日本語版をすぐに公開したようです。ポイントとしては、Bard云々ではなく、API公開後のAI生成コンテンツやChatGPT等の言語生成システムによるコンテンツをどう評価するか、という内容ですが、この辺についてよくある質問とともに案内してくれています。
まず、Googleが言いたいことは、コンテンツ作成者が人間であろうがAIであろうが、良質なものは良質だし、スパミーなものはスパミーだということです。そして評価にはE-E-A-T(経験-専門性-権威性-信頼性)の概念に基づいているとのことです。まぁ確かに理屈での解釈は難しいですよね…。例えば、「経験」は一次情報なるもののはずなのに、それを処理し体系立てたAIによる生成は二次情報になるのではないか?とか。「権威性」は著者に基づいているはずなのに、それを処理し体系立てたAI生成コンテンツは著者をどう捉えるのか、とか。「信頼性」においてはガセネタをどこまでAIは判別できるのか、とか。
まぁ、ここではコンテンツの作成者としてAIを作成者として署名するのは推奨しないとは言ってくれていますが…。
変なコンテンツはSpamBrainで駆逐もするし、E-E-A-Tの見地でもクリアしている高品質なコンテンツはちゃんと評価されるとのことです。Googleのいう概念は分かるのですが…こればっかりは実際の検索結果のランキング傾向を見てみないと具体的には分かりませんね。
個人的には、Googleの検索ランキングシステムである信頼できる情報システムがどこまで検索結果に機能するかに注目しています。
AI導入は利用者にも革新的か
今回のこのBardの導入はGoogle検索として非常に革新的であり、AIによる新しい未来への大きな一歩になると思います。ただ、一方でGoogle検索利用者にも大きな一歩になるのかどうかはまだ分かりません。BardはあくまでもGoogleの検索結果枠のひとつを担うに過ぎず、現在のGoogleのプラットフォームとしての役割は“良質なWebサイトによる良質なコンテンツを検索ユーザーに紹介する第3者である”状況に変わりはありません。ですので、潜在的に私たちが持っている“Googleは検索者と情報のマッチングプラットフォーム”としての利用意識はそこまで変わらないと思います。
とはいえ、Googleが目指すのは対話型検索エンジンであり、それは利用者に寄り添うものであり、“情報に出会うための無人的友人”になることだと思いますので、今後の検索結果も少しずつ変わっていくものかと思います。これからも、時には大胆に検索結果が変わることもあるかもしれませんが、私たちもリテラシーを高くして利用することを心がけていきましょう。