リンゲルマン効果

工数や人件費をマネジメントしていく中で、どうしても考えてしまうリンゲルマン効果。今回はこのリンゲルマン効果について、ふわふわっとお話ししたいと思います。要は「自分くらい手を抜いても…」ってやつですね。

綱引き

リンゲルマン効果とは

リンゲルマン効果とは「人間は、集団になればなるほど手を抜く傾向にある」ということです。「社会的手抜き」とか「社会的怠惰」とか言ったりもします。農業工学者であるマックス(マクシミリアン)・リンゲルマン氏が実験した説です。

実際にこのリンゲルマン氏は綱引き等での集団作業において、1人あたりの力量を数値化する実験を行いました。
その結果、1人で作業する際の力量を100%とした場合、2人では93%、3人では85%、4人では77%…そして8人では49%といった具合に、力量が低下していくそうです。

確かに、私個が子どもの頃もクラス対抗の綱引きでまともに力一杯引いた記憶がございません(笑)。

リンゲルマン効果

足し算の工数設計の恐怖

このリンゲルマン効果を「社会的怠惰」という名のもと、人間が持つ深層心理の傾向値として済ませることもできますが、マネージャーや経営者が工数設計をする上ではリンゲルマン効果を頭の片隅に入れておかなければならないと思います。

例えば、サイト改善作業。実際に作業計算する上で、1人で200時間かかると算出したとします。「200h/人」と表記して見積もったりすると思います。でも実際には200時間分となると、2人とか3人で行うケースがほとんどです。そして複数人で作業をした結果、工数を合計するとなぜか205時間分とか210時間分になっていたりするんです。

1案件における工数の誤差であればまだ良いかもしれませんが、これが作業専用人員としての採用計画や人件費となるとまた話は違ってきます。例えば1人で1日8時間かけて毎日20個の作業をしていたとします。これを2人で作業すれば1人あたり4時間で済むと計算していても、実際には1人あたり4.5時間かかってしまって、結果的に1時間工数が無駄になってしまうこともしばしば。

さらに怖いのが、これが数百人単位の事業や会社になった場合。業務を行う上で「人が足りない」という状況から、「じゃあ人を増やせば良い」という単純な足し算によって算段した結果、1人あたりのパフォーマンスが低下した例を私は多く見てきました。

「複数人になることで、責任感も分散されるからではないか」とか「周りを見て自分のペースを調整するからではないか」とか、色々な深層心理や本能的な部分を推察することはできますが、そんなことを言っても解決はできません。自然と働いてしまうのがリンゲルマン効果なのですから…。

では、どうしたら良いか

予め設計した業務パフォーマンスを達成させるために、管理職がリンゲルマン効果を理解しないまま集団を管理してしまうと「もっとやれ!業務効率が悪い!」という叱咤やハラスメントに繋がってしまい、管理職と労働者が精神衛生上お互い悪化してしまいます。工数や人件費をマネジメントする中でそうならないためには、以下2つの方法があります。

  • 1人あたりの業務パフォーマンスを算出したら、次に実際の導入人員数を加味して改めて1人あたりの工数を設計する
  • リンゲルマン効果を未然に防ぐために、集団にならないよう事業組織をとことん細分化していく

でも上記においてはそれぞれ短所もあります。
前者だと、結局(全てリンゲルマン効果のせいになってしまい)業務効率化を図る糸口が見つからなくなることもあります。後者だと、組織が殺伐とした雰囲気になったり、組織間での排他意識が生まれてきたりするリスクも生じます。

いずれにしましても、管理者は組織の雰囲気や社員特性等に合わせてどういった方法が良いか求められるでしょう。逆に考えれば、こういった方針無くして健全な働き方は無いのかもしれませんね。

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