SEOはもはやSearch Engine Optimizationではなく、Search Experience Optimization(検索ユーザー体験への最適化)だという意見も多くなっていますが、実際SEO取引をしていると既に私たちの動きもそうなってきていますので、その辺の話をご紹介したいと思います。
SEOに求める形の推移
私の経験値においてお話しさせていただきますと、まず、何年か前までSEOベンダーに求められていたのは「特定の検索キーワードでの順位向上」でした。とにかく指定したキーワードで1位を取ってくれ…と。ですので、SEOベンダー側にも成果報酬型プランがあったり、キーワード毎にプランを見積もったりするケースが多かったです(一部のSEOベンダーでは未だにキーワード単位で見積もるケースもありますが)。
その後、SEOベンダー側も発注企業側もSEOはアクセス数を最大化すべき施策だという形になりました。これは昨年くらいまで合意していた方向性だったと思います。順位を上げるのも結局はアクセス数向上が目的だという考えです。従って検索結果画面からのクリック率まで検証するようになりましたが、当時Googleが提唱しはじめたマイクロモーメントという概念が現場に影響する程ではありませんでした。
しかし昨年末くらいから、SEOベンダーに求めるものとして、新しくキーワードの発掘&アプローチという市場把握要素と流入後のセッション要素が組み込まれるようになってきたのです。つまり、検索順位上昇とアクセス数最大化に、その前後要素が加わった形になります。そもそものアプローチ市場の捉え方から考え、流入ユーザーのセッションやコンバージョン率(以下:CVR)まで追うことで、検索ユーザーの出入り全てを最適化するという概念が追加されるようになったのです。
なんか変に気持ち悪い図になってしまいましたが、イメージにすると以下のように最近のSEO施策対象の概念が広がっています。
キーワード市場の捉え方と発掘&アプローチとは
SEOにおいて、当たり前ですが“サイトの中に書いてないことは検索しても出てこない”わけです。逆に言えば“検索で上げたければ、サイトの中にしっかり書くこと”です。また“謳いたいことと教えてあげたいことは違う”というのも理解することです。サイトの情報設計を考える際、サービスとして謳いたいことばかりに目が行きがちですが、そのために教えてあげといた方が良いことだってあるわけです。
企業サイトでSEOを考える際は、この“サービスと情報紹介のバランス量”がポイントになってきます。このバランスに合わせてキーワード市場を捉えるわけです。後はリスティング広告でキーワードを購入する際の考え方や運用する際のグループ分けする概念と同じです。
ここの細かい話やこれ以上の細かい話は企業秘密になってしまいますが(笑)、SEOを考える上でマーケットの捉え方というのが非常に重要になってきているのです。この辺はさすがに某最大手広告代理店系のSEOサービスは上手いですよね。SEOアプローチとしてのプランニング部分はやはり広告代理店系ベンダーは上手です。
流入後のセッション要素とは
これはもう、普通にセッション分析の概念です。しかし、SEOの場合はちょっと違います。前述した“謳いたいことと教えてあげたいことは違う”という概念が入るのです。通常、広告やプロモーションで考えれば、流入セッションは全てCVR向上対象になります。しかし、一般検索からの流入においては、CVR向上対象としてカウントしない方が良いセッションもあるのです。
例えばInformational Query(情報収集型クエリ)。いわゆる「知りたいだけのキーワード」です。この、情報を知りたいだけの検索ユーザーにとっては、情報さえ分かれば離脱します。つまりサイトオーナー側にとって“教えてあげたい”と思って設計した情報だけ得て、“謳いたいこと”は見ずに去っていくのです。こういったセッションは滞在時間が長くて直帰率が高い傾向にあります。
大事なことは、このセッションをどう捉えるかです。このようなセッションをCVR向上対象に含めてはいけませんし、「じゃあこういうセッションを排除していこう」という考えも不要です。また、「コンバージョンしないならせめて滞在時間をもっと長くさせる仕組みを」等と考える必要もないでしょう。では、どうやって…というのも企業秘密になっちゃいまして(笑)…すみません。しかし、流入してくる検索ユーザーの種類に合わせて適切にセッションを仮説付けておかなければ、無駄に目標KPIがハイパーな数字になってしまい、結果的に誰も喜ばなくなってしまう、ということだけ理解していただきたいと思います。
ちなみに、セッションを分析する上で、サイトにGoogle AnalyticsとGoogle Search Consoleのみを実装している場合、検索ユーザーの出入りの照合が面倒です。Landing Page(受け皿ページ:LP)を軸に、Google Search ConsoleではLPまでの流入クエリ(キーワード)が分かりますが、その先は分かりません。Google Analyticsでは、LPからのセッションやコンバージョンは分かりますが、LPまでの流入クエリ(キーワード)が分かりません。ですので、それぞれをマージし、LPを軸に出入りを検証していく必要があります。この面倒な分析が必要なことは理解しておいた方が良いでしょう。
なんだかんだ
このようにSEOベンダーに求められる範囲はどんどん広がってきています。もう検索順位向上は前提と言いますか…発注側も受注側も全て理解していることが前提となっています。その上でSEOをどう捉え、検索ユーザーとコミュニケーションを構築していくか、という話やプロジェクト支援が増えてきております。
ただ、繰り返しになりますが、これは飽くまでも私の現場経験値です。もっと先の話に進んでいる企業様もあったりするとは思います。いずれにしましても、現在SEOに求められている内容は多様化してきていますので、SEOベンダー側にせよ、SEOコンサルティングの発注側にせよ、幅広い視野で時勢を追っていくと良いでしょう。