とてもセンシティブな内容かもしれませんが、世界には様々な肌の色の人がいます。それは人種という括りだけではなく、私たち日本人の中でも色黒の人や色白の人がいます。そしてその肌の色に合わせて似合うメイクも様々ですよね。色黒の人に合う服やメイク等、もうちょっと利用者をフォーカスした商品アプローチが出来れば、販促機会も広がるはず…。そんな中、Googleは肌色を10段階で表す尺度としてMST測定を開発し、今回のGoogle I/Oのタイミングで発表しましたので、ご紹介します。私も絵を描いたりするので良く分かるのですが、肌色の表現って実は複雑で非常に難しいんですよね。
肌色を識別しその先に繋げる
今回のThe Keywordの記事を読むと、人種の判断をすることが目的ではなく、世界中の色々な肌の人に似合った商品やサービスを提供することで、よりマッチングしやすい環境を作ることが目的だと思われます。
Googleでの肌色表現の改善
実生活、メディア、オンラインなど、周辺世界に自分がどう映っているか確認するのは、重要なことです。これまでの画像技術力とWeb上の肌の色の表現力に関する課題について、Googleでは、有色人種の肌色を上手く表現できず実際とは違った色味で肌の色を表現されていた部分があったことを理解しています。昨年Googleは、Real Tone for Pixelを発表しました。しかしこれは、Google製品全体で多様な肌の色の表現を改善する取り組みの一例に過ぎません。
この度Googleは、イメージの公平性とGoogle製品全体の表現力向上への取り組みに向けて、次の段階に入ったことをご紹介します。ハーバード大学教授で社会学者のエリス・モンク博士との協業体制により、世界中の様々な肌色をより包括的に表現すべく設計した新しい肌色の測定法をリリースします。モンク博士は、肌の色とカラリズムが人々の生活にどのような影響を与えるかを10年以上に渡って研究してきた人物です。
モンク博士の研究の集大成が、Monk Skin Tone(MST) Scaleです。この10段階査定からなる測定は、今後数ヶ月の間に様々なGoogle製品に組み込まれる予定です。Googleはこの測定法を広く一般にも公開し、誰でも研究や製品開発に利用できるようにしています。Googleの目標は、この測定法が業界全体で包括的な製品や研究に役立てられるようになることであり、また、様々な人々の協力を得てこの研究を共有・学習・進化させるチャンスであるとも捉えています。
この測定法は、より幅広い肌色を表現しながらも、技術開発や評価に使いやすいように設計されています。実際Googleの調査によると、アメリカの参加者の間では、現在の技術業界の標準と比較して、「Monk Skin Tone Scale」のほうがより自分の肌色を代表していると感じている人が多いことが分かっています。これは、特に肌の色が濃い人ほど顕著でした。
「私たちの研究では、多くの人が、自分が何らかの人種に分類されていると感じていますが、民族や人種の分類とは別であることがわかりました」とモンク博士は言います。「過去の肌色測定などの多くのカテゴリー分けの方法において、この人種と肌色の多様性まで考えられていません。だから肌色の表現の欠如が起こるのです。私たちは、自分の肌色が正しく表現されていると感じられるよう、測定方法を微調整する必要があります。」
Google製品の改善にMonk Skin Tone Scaleを活用する
肌色に対するアプローチを見直すことで、画像における表現をより理解し、ある製品や機能が様々な肌色でもきちんと機能するかどうかを評価できるようになります。これは、(コンピュータが画像を見て理解できるAIの一種である)コンピュータビジョンにおいて特に重要なことです。幅広い肌色を理解するような構築やテストを行っていない場合、コンピュータビジョンシステムは肌の色が濃い人ほど上手く機能できないことが分かっています。
MST測定によってGoogleやテクノロジー業界全体がより代表的なデータセットを構築すれば、公正なAIモデルを訓練・評価できるようになるでしょう。そのことによって、Google製品や機能が、あらゆる肌色のあらゆる人種に適した結果を出せるようになります。例えば、画像から顔を検出する機能を評価・改善するために、このMST測定を使用します。
Googleの製品では、他にもこのようなことが行われています。
検索における肌色の表現の改善
毎日、何百万人もの人々が、各ニーズを反映した画像を求めてWeb上を検索しています。そこでGoogleでは、MST測定を使用した新機能を導入することで、あらゆる背景を持つ人々がより適切で役立つ検索結果を簡単に見つけられるようにしています。
例えば、Google画像検索でメイク関連のクエリを検索すると、肌の色で検索結果をさらに絞り込むオプションが表示されるようになります。これにより「普段使いのアイシャドウ」や「ブライダルメイク」を探している人は、より簡単に、自分のニーズ(肌色)に合った結果を見つけることができます。
検索結果に自分の肌の色に基づく内容が表示されることは、本当に適切で有益な情報を見つけるための大事な要素になります。そのため、人間に関する幅広い検索や、検索結果に人間が表示されるような検索では、画像結果にさまざまな肌色による絞り込み表示ができるよう改善を進めています。将来的には、MST測定を取り入れて、より幅広い検索結果を含む画像の検出とランク付けを行い、誰もが探している画像を見つけることができるようにする予定です。
しかし、より正確な肌の色に基づいた検索体験を実現することは、Googleだけでは成し得ません。コンテンツにどのようなラベルが付けられているかは、私たちのシステムが適切な検索結果を表示するための重要な要素です。今後数ヶ月のうちに、コンテンツに標準でラベル付けする方法を開発予定です。クリエイター、ブランド、パブリッシャーは、この新しい全体適用スキーマを使用して、肌の色、髪の色、髪の質感などの属性でコンテンツにラベルを付けることができるようになる予定です。これにより、コンテンツ制作者や企業は、検索エンジンや他のプラットフォームも容易に理解できる方法で、画像にラベル付けをすることが可能になります。
Googleフォトにおける肌色表現の改善
また、MST測定を利用してGoogleフォトの改善も行います。昨年プロの画像メーカーと協業して、自動補正機能の改良を行いました。そして今回MST測定で評価した、あらゆる肌色に対応するリアルトーンフィルターを新発表します。Kennedi Carter氏やJoshua Kissi氏など、被写体を美しく正確に描写することで知られる様々な著名な写真家と協力し、評価やテスト、仕組みの構築を行っています。この新しいリアルトーンフィルターによって、より幅広い選択肢の中から自分のスタイルを反映したものを選ぶことができます。リアルトーンフィルターは、今後数週間のうちにAndroid、iOS、Web上のGoogleフォトで展開される予定です。
次の段階は?
私たちはMST測定を広く公開することで、他の企業も自社製品に利用したり、その利用結果からも学習したりできるように、またGoogleが他の企業と提携し、提携先から学習できるようにしたいと考えています。皆さまからのフィードバックを得て、より学際的な研究を推進し、共に前進していきたいと考えています。是非こちらからご意見をお聞かせください。Googleは、モンク博士と協業して様々な地域や製品の活用でMST測定を評価し、世界中の人々や利用シーンで測定が機能するよう、繰り返し改善を続けていきます。そして、Googleの製品が全ユーザーにとってより良く機能するよう、努力を続けていきます。
私たちはGoogle製品をより良く、より一般的になることに専念していますが、このようにWeb上のあらゆる人のために協力し合うことで、あらゆる可能性が生まれることにワクワクが止まりません。
引用)The Keywordより和訳
はい、ということで今回発表したMST測定(Monk Skin Tone Scale)の内容とそれがどういうことをもたらすかについてまとめます。
- 肌色を検知できれば顔を検知できる。そうなれば人間部分の切り抜きやフォーカス等、しっかり対応できるようになる。今のコンピュータにおける肌色の識別は曖昧であり、そのため、色が黒い人ほどそれが上手く検知できていない。
- Google画像検索でメイク関連のクエリを検索すると、肌色で検索結果を絞り込むオプションが表示される。
- 今後は、肌の色が影響するような検索結果を含む画像の検出とランキングをしていく。
- 人の写真に関してはスキーマ設定をして肌色や髪色、質感を明記することで検索結果にラベル付けがされるようになる。
- リアルトーンフィルター:Googleフォトでもよりリアルな肌色の質感を表現できるようになる。
- Googleとしては、世界中の企業にも活用や協業してもらい、よりMST測定を広げ、精度をあげていきたい。
とても楽しみですね。
特に黒人に関して、とファッション面
おそらく、一言に「黒人」という言い方をしても様々な肌色があり、またそれはあらゆる民族や人種を鑑みた上で設計しなければならないが、今まではそれが雑な識別なのだったと思います。そのせいで黒人に対するカメラの機能が正常でなかったり、適切な肌の色を演出できなかったりしたのではないでしょうか。また、身に付けるモノ(服やアクセサリー、メイク等)に関しても、自分の肌の色に合う色を見つけるのにイメージしにくかったりしますよね。例えば、黒人モデルが蛍光イエローのバッグを持っているのを見て、「めっちゃかっこ良い!」と思って買ったら、自分には全く似合わなかった…とか(笑)。
実は色々な局面で、コンピュータが人間の肌を理解・識別することは、大事なことだったりするのです。そういう意味では、今回のGoogleによるMST測定は、検索だけでなく世界中の市場を活性化することに役立つのではないでしょうか。