「SEO的サイト制作手順」として、SEO観点から見たサイト制作におけるポイントはご紹介したつもりでした。しかしながら、最近私の方でサイト制作事業自体を始めた結果、おかげさまでお問い合わせを多くいただきつつも、「このサイトのリニューアルを〇月までに〇〇〇万円で出来る?」のようなざっくりしたご相談が多いです。
コミュニケーション次第ですが、さすがにそれだけの情報では判断しづらいため、いくつかの事前確認ポイントとして5つご紹介させていただきます。いわゆる要件定義ですね。これも私のメモ代わりですので、ヒアリングする側もされる側もご確認しておいていただければと思います。
1.制作依頼の目的
サイト制作でもリニューアル時でもそうですが、まずは目的です。簡単に申し上げますと以下の点がございます。
- 流入数の増加
- 獲得数の増加
- デザインの変更
- 管理方法の円滑化
流入数というのはSEOにおける流入数なのか否かがまずは重要です。SEOで流入数の増加を目論む場合は「SEO的サイト制作手順」のような手順を踏まなければならず、事前準備だけでも相当な時間を要します。
他にもリスティングや各種広告、プロモーションで流入数の増加を目論むというのであれば、流入数の増加に関してはプロモーション自体の話であり、サイト制作時には獲得数を増加(=獲得率を上昇)させるためのセッション動線設計、獲得ストーリーの仮説立て、デザイン等がポイントになります。
デザインの変更を希望するのであれば、希望するデザイン要素を明確化しなければなりません。その際、参考にしたいサイトを5パターンくらい挙げるのが良いでしょう。フォントサイズやブランドカラー、カラム構造のような明確化できるものは勿論のこと、印象や雰囲気といったテイストまで感覚を共有するためには参考サイトがあった方が良いです。
また、「管理方法が今まで煩雑化しすぎている」とか「色々と担当者レベルで動かせるようにしたい」という抽象的な課題を挙げられる方もいらっしゃいますが、それも具体化する必要があります。ヒアリングする側は「色々と動かせる」の意味が分かりません。例えば、「トップページのどこのコンテンツを動的にしたい」とか「動かしやすいようにCMSを導入したい」とか、「誰々がどこどこの部分を管理している」とか、具体的な課題と改善案を共有することが重要です。
以上のように、目的ひとつとっても動きがまるで異なります。もちろん上記全てが目的ということであればその分時間もかかりますし、工数上の人件費もかかるため、費用も加算されます。
しかし、制作の目的は”そもそもサイト制作に至った動機”になるため、ここを徹底的にベンチマークしておかないと後々業務に流されてしまうことになるでしょう。
2.制作のボリューム
ここが最も費用感に直結する部分ですので、そもそもここが決まらないと見積ることができません。ですのでここは極力固めておかなければなりませんが、以下の要素があります。
- ページ数
- 素材・データ
- 対応デバイス
まず、ページ数というのはそれに合わせて手間がかかります。一般的にページを作成する人員の工数設計として、1時間あたり1人20,000円だったり、1ページあたり10,000円だったり、というケースが多いです。勿論肝となるLPの作成や中間ページ、トップページ等になると1ページあたり100,000~150,000円はザラにあります。
デザイン、コンテンツ、コーディング、各種情報(title,meta,見出し等)を全て入れ込んだ上で、どこまで汎用されるページがどれくらいあるのかによって作成までに何時間かかるかが変わってきますし、そういった計算をしなければなりませんので、ページ数というのはしっかり決めておきましょう。
「SEO上、施策キーワードを上位にするためには逆に何ページ必要ですか?」というご質問もいただきますが、その場合はキーワード分析をした上でサイト構造を作成し、そこから算出されるページ数を提出します。その後見積る形になりますので、そういった手順があるということを理解しておく必要があります。
素材やデータは誰が何をどこまで用意するかを決定しておく必要があります。ロゴは?イラストは?撮影は?テキストコンテンツは?等、すでに用意があれば投げ込む作業のだけですので、コーディング力やCSSがきれいな会社、且つ廉価であればあるほど良いかもしれません。しかしながら、「青い海を撮って欲しい」「イラストは希望テイストを準拠して描き下ろして欲しい」等があれば、カメラマン、イラストレーターの手配やロケーション等の費用が発生します。勿論買い取りが基本ですが、業者によっては使用料という形でのレンタルというケースだってございます。テキストコンテンツも同様ですが、所有権や変更修正可能範疇等をしっかりと線引きしておきましょう。
対応デバイスも勿論ボリュームに影響します。タブレット端末やスマートフォン等のスマートデバイスについてです。レスポンシブウェブデザインが希望であれば、カラム構造の収縮方法やグリッドの移動方法等を考慮してデスクトップの情報設計を考えなければなりませんし、別ファイル展開するのであれば、単純計算で倍のボリュームになります。対応するベンチマークブラウザとそのバージョンも影響しますが、デバックも入念にしなければなりませんので、ここも費用感に直結します。
3.必要な機能
応募フォームや購入システム、またそれに伴うデータベースの構築等、機能面で取り入れたいことを決めておく必要があります。
- 応募フォーム
- EC機能
- DB管理
- 動的要素
応募フォームもどういったものを作るかによります。資料請求程度の要件であれば、簡易的なCGIで済むものもあれば、CRM設計上、フォームを開発する必要もあったりします。勿論、個人情報保護方針や特定商取引法表記、SSL(私はいずれにせよデフォルトでSSL化を推進していますが)も設置する必要があります。
EC機能に関しても独自開発なのか、EC-CUBEのようなCMSなのか、カラーミーショップのようなASPなのか、等によっても異なります。独自開発の場合の所有権は制作発注側なのか制作会社なのか、等もトラブル回避のために決めておかなければなりません。勿論、費用感にもよりますし、実費としてかかってくるものにもなります。
DB管理に関しては、裏側のCRM上の顧客管理方法です。社内イントラネットに連結させることで、同じサーバ内で全て管理するケースもあります。その場合の個人情報取り扱いにおける各種契約はもちろん締結しなければなりませんが、イントラネットとの繋ぎ込みやDB構築等のボリューム次第では費用感が飛躍的に嵩むため、こういった要件もしっかりと決めます。
動的要素というのはJavaScriptやFlash等のプログラミング言語やソフトの導入有無です。複雑化するようであれば、相応のスキル人員と時間が必要になりますので、専用に工数設計しなければなりません。今でこそFlash等は使わずにYouTube等からのエンベデッドを活用するケースが多いですが、その場合の動画制作等も含めて、誰が何をどこまでやるのか明確化しておきましょう。
4.管理運営方法
誰が何をどこまで管理するかです。サイト制作における納品後の取り決め等によって対応も異なります。対応が異なるということは費用も異なるわけです。
- ドメイン・サーバ・SSL取得
- 管理・メンテナンス業務
- 更新作業
ドメインやサーバ、SSLの取得はどの会社で行うべきかになります。制作発注側が契約する場合はFTP情報の共有が必要になりますし、制作受注側が契約する場合は、1年後の再契約時に都度請求業務が発生します。「制作に関しては丸投げしたい」という強い気持ちがあれば(笑)、制作受注側にお任せするのが良いですが、できればドメインやサーバ、SSLは発注側で所有しておいた方が後々何かと楽だとは思います。
更新・メンテナンスに関しましては、WordPress等のプラグインを使用していたりする場合の更新業務や他にもCMSを使用した場合のメンテナンス等の業務です。制作発注側が後々更新作業を行っていく上で、間違えて変なところを弄ってしまったという場合の修正業務もあったり、CMSやサイト構造を改善するための業務等、サイト制作後のお付き合いの拡張性を考えた上で決める必要があります。また、こういった場合は月額固定や半月額固定、実作業費の都度請求等、様々な契約形態がありますが、サイト制作後の月額費用という点では変わりませんので、予め計算しておきましょう。
更新作業や修正作業等、一度納品した後にサイトに手を入れていくのは誰か、等も決める必要があります。サイト内ブログやキャンペーン情報、係るサイト内バナー制作等、制作受注側が行わない場合は、サイト制作後に”サイト更新勉強会”と称して管理運営者向けに教育することも可能なはずです。特に独自CMSを納品していたりする場合には、サイト管理運営者はしっかりと取扱い説明書を作成しておいた方が良いと思います。
5.Earned-Media対応
オウンドメディア(Owned-Media)としてサイト制作をしたり情報設計をしたのであれば、今度はサイト外の部分としてアーンドメディア(Earned-Media)の管理も確認しておく必要があります。
- ソーシャルメディア対応
- ファンサイト対応
FacebookやTwitter、Google+、Instagram、Pinterest等のソーシャルメディアにしてもその運営方法や情報設計方法、自社サイトとの繋ぎ込みをどこまで依頼するかを決めましょう。現在、企業サイトで専用の公式SNSをやっていない会社の方が少ないくらいですので、例え運用までは依頼しないにしても、繋ぎ込みのしかたやバナーの設置等は事前協議が必要です。繋ぎ込み方が下手くそでデザインが崩れているサイトもしばしば見受けられます。後から取って付けると不自然な見栄えになったりしますので、予めこの辺も決定しておくことが重要です。
そして、ようやく時期とお金の話
ざっくり5つのポイントに分けてご説明しましたが、以上を踏まえて初めて制作会社は必要な人員工数を計算し、スケジュールと見積りを提出することが可能です。
逆に、スケジュールと見積りに合わせて上記5つのポイントを決めることはできますが、スケジュールと見積りから相談するようなご担当者様が5つのポイントに関して決定・判断できるわけもなく…こうなるとお手上げですね。制作発注側や制作会社側のストレスや赤字業務になったり、満足の得られるサイトが完成しなかったりしてしまうわけです。
私が受けるサイト制作に関しましては、極力料金ハードルを下げさせていただいております。それによって、サイト制作事業における後発である劣勢要素を払拭するためです。でも「早い安い旨い」程度の制作事業にしたくはありませんので、絶対的に満足いただけるサイト制作を心掛けています。
だからこそ、上記5つのポイントは明確にしておきたいものでございます。