はい。とてもざっくりした内容です。提案書における考え方とパワーポイント(以下:.ppt)での資料作成テクニックに関してちょっとご紹介させていただきます。既に.pptは使える前提でお話させていただきますので、そこは予めご了承ください。でも、意外と色んな書籍を読み漁ってもちょうど良い感じで提案書の作り方を紹介してくれている本は少ないと思います。ですので、この記事がちょっとした悩みの隙間を埋められる内容になっていれば幸いです(笑)。
提案書は仮説の物語
私は、提案というものは(分析による成功への)仮説作りが95%だと考えています。残りの5%がアイデアです。従いまして、分析による結果の共有とそこから得られる仮説作りがうまく伝わっていれば良いわけです。ただ、断片的に仮説を打ち出しても意図が分散されてしまいます。そこで、大事な要素として以下2つの考えをご紹介します。
与件の整理は与件を確認するわけではない
オリエンテーションやRFPを受けてから大分時間が空いてしまったり、細かく要件が決まっている場合は提案の最初に与件を整理してあげると、その後のプレゼンが進めやすくなります。しかし、ここで単純に与件を整理することは利口ではありません。実は与件を整理すると見えてくる方向性があるものです。であれば、与件の整理と共に「それを受けて私から今回こういう提案をさせて頂きます」と最初に方向性をコミットしてしまえば進めやすくなります。
与件を確認すると共に「要はこういうことだと思いますので、ここの部分でご提案させていただくことで与件をクリアする策をお持ちしました」とするわけです。ここで一旦提案の流れをコミットすることで、受ける側の心の準備を整えるだけでなく、“場”を自分の空気感で進めることもできるのです。そういう意味では、しっかりと考えられた与件の整理はファーストアタックとしては有効です(笑)。
起承転結が美しい
ただただ似たようなことを何枚も何枚も提案資料として紹介しては、受ける側の眠気を誘います。ですので、提案資料も物語と同じように“起承転結”が必要なのです。
でも単純に“起承転結”と言っても提案資料における“起承転結”なんてピンと来ないかと思います。そこで、ここでは“企場展尻(キジョウテンケツ)”としてご紹介します。
- 「企」:与件の整理を受けて企画意図や企画概要を伝える
- 「場」:市場や競合を分析し、大局的に機会を把握する
- 「展」:展開案と施策案を具体的且つ明確に提案する
- 「尻」:尻拭いと言うわけではないが、検証方法を予め明確にする
まぁ、だいたい私が言いたいことはお察しいただけると思います。「企」「場」は提案書としてしっかり地に足を付ける意味でも絶対必要です。独りよがりな提案資料にならないためにも、そして仮説作りの土台になるためにも、多角的に捉えていきましょう。
気を付けていただきたいのは、「展」の部分。それは提案者(社)じゃないとできないことか、また受ける側としてその相手ならではの展開案か、ということ。提案書の宛先を他の企業等に変えても通用する提案書では相手に刺さりません。また、たとえ良い展開案でも誰でも実施できる展開案であれば費用が安い方に流れるはずです。ここは提案書作成後も改めて確認すべきだと思います。
それともうひとつ、(特にインターネットにおいて)その効果が明確化できる提案においては、しっかりと検証の仕方やレポートの仕方、PDCAの回し方まで提案すべきでしょう。“尻拭い”という言い方ですと失敗前提になってしまうニュアンスですので適切な言い方ではございませんし、“ケツモチ”というのも反社会的なイメージで適切ではないのですが…まぁお尻的な話です(笑)。実際の運用方法だったり、施策後にどういう形で支援していくかを明示しておかないと、やるだけやってサヨナラ的な印象も受けかねませんので、最後まで気を抜くことなく提案資料を作成すべきですね。
.pptの捉え方
仮説の物語が出来れば、次に.pptの作り方です。まず何枚の.pptで作成するか決めることが重要です。目次を作成するとより提案書の全体像を自分で把握しやすいでしょう。そうすると.ppt1枚当たりの役割が明確化するはずです。1枚1枚が有機的に機能するので、提案を受ける側がプレゼン中に勝手に次のページをめくり始める…なんてことも極力防ぐことが出来ます。
但し、お気をつけ頂きたいのはその1枚の構成のしかた。
私が考えるのは“言いたいことは1ページで1つ”ということです。経験上、1ページでいくつもいくつも言いたいことを書くと方向性がブレます。必ず1ページにつき言いたい結論は1つまでにすると良いです。実際にどういう書き方をすれば良いか、私の意見として今回は2つだけご紹介します。
配置構成
以前、大手広告代理店の方と一緒にお仕事させていただく中で、散々教えられたことがございます。「最初に2行でプロセスを流せ!…で、図にしろ!…最後は言いたいことをまとめろ!」です(笑)。当時まだ若かった私に対して一線で活躍されているプランナーの方にかなり強い口調で叱られながら資料作成した記憶がございます。「なぜ違う会社の人からこんなに怒られなきゃいけないんだ」と当時は思ったものですが、今考えますと心から感謝しています。なかなかこんなことまで言ってくれる方はいませんよね、特に今の時代。
↑イメージとしてはこんな感じです。特に説明も要らないと思いますが、気を付けていただきたいのは左右の余白の取り方。.pptいっぱいに左右ギリギリまで書くと、あまり美しくありません。適度な余白を取って作成すると見やすくなりますし、資料を紙に出力した後、ステープラー等で留める時にも便利です。
装飾
まずは、.pptにおける色の使い方。提案資料におけるグローバルカラーは提案社のコーポレートカラーに準じるケースも多いとは思いますが、色の数は極力減らした方が良いです。企業によっては提案書の色を使い分ける意図を確認する担当者もいます。以前、ある大手グローバル企業から「今まではこの色で展開してきたのに、この色とこの色が異なるのはなぜですか?」と訊かれたことがあります。もちろん、その時は色を変える意味があったので口頭説明で何とか事なきを得たのですが、意味なく何色も何色も色を使うのは良くありません。また.ppt内で強調したいところがあったとしても、何色も使われていてはその箇所が埋もれてしまいます。ですので.pptを作る時は、直観的に分かりやすくしたくても、極力2,3色程度で抑えることをお勧めします。
それとフォントサイズ。プロジェクター等を使って説明する時は必ず提案の部屋(箱)の大きさを確認しておきましょう。大体フォントサイズが20以上であれば見えるとは思いますが、部屋の大きさによっては字が小さすぎて見えないということもしばしば…。その時点で提案内容は相手に伝わりませんので、絶対に気をつけましょう。紙で提案するのであれば、フォントサイズは最低でも12くらいがちょうど良い気がします。
では前述の配置構成を踏まえて一旦.pptで1枚作ってみましょう。
↑とりあえずこんな感じですかね。アナログな方はまず手書きで紙に書くケースもありますが、まぁ私の場合は考えながら適当に.pptで配置しちゃいます。このままでもなんとなく分かりますが(分かりませんか……w)、あまりにも寂しいので装飾していきましょう。
↑ピンク地と濃い青地はアイデンティティ的なカラーですので、そこはご了承いただきたいのですが、大体こんな感じになります。どうですか?結構すっきりして美しくなっていませんか?…え?美しくない?だとしたら私のセンスもまだまだ未熟と言うことです…(笑)。ここは正直センスも問われますので、是非自分なりの“美”を追及してみてください。本当に美しい提案書はお金の匂いもプンプンします(笑)。
意外と本では分からないことを書いてみました
とりあえず今回はこんな感じで止めておきます。私も若い頃、提案書や事業計画書を自分で作るにあたって、随分と様々な本を読み漁ったものです。でも、意外とこういうことは書かれていないんですよね。自己啓発的なものだったり、企画書の考え方手順を書いてある本はかなりあるんですが、実践的なものはなかなか無かったと記憶しています。
この記事をご覧になられた方にとって、本内容がどこまで助けになるかは分かりませんが、一応私がいつも念頭に入れているものを中心に書いてみました。私は実際に提案資料作成代行的な仕事もしておりますので、気になった方は是非ご相談くださいませ。あ、お財布も忘れずに…(笑)。