1社で似たようなサイトを複数運用しているケースがまだまだ多く存在しているように見受けられます。例えば、対象エリアが違うだけの賃貸情報サイト、職種や業界が違うだけの求人サイト、相談切り口が違うだけの士業サイト等です。今回はこういったケースについて、私の持論も含め見解をご紹介したいと思います。
複数サイトを運用している例とは
イチ企業が複数のサイト運用を行っていること自体はまるで問題が無いのですが、イチ企業がSEO上の幻想的利点を求めて類似サイトを複数運用しているケースがまだ存在しているのは事実ですし、それは問題だと思います。私の経験上、比較的中規模企業においてこういうケースが散見されがちでして、いくつか例を挙げてみたいと思います。
例1)1社で対象エリアが違うだけの賃貸情報サイトを複数運用
- 文京区の賃貸マンション選び.com
- 墨田区の賃貸マンション選び.com
- 江東区の賃貸マンション選び.com
例2)1社で職種や業界が違うだけの求人サイトを複数運用
- 医師の求人サイト.com
- 非常勤医師の求人サイト.com
- 研究医の募集サイト.com
- 看護師の求人サイト.com
例3)1社で相談切り口が違うだけサイトを複数運用
- 離婚相談.com
- 債務整理.com
- 弁護士求人.com
「確かにひと昔前までは、こんなサイトたくさんあったよね」と笑ってしまう人もいるかもしれませんが、今でも上記のようなサイト群を運用している企業があるのも事実です。私は幻想的利点と前述しましたが、実際に「カテゴリ毎にテーマの強いサイトがあった方が、各キーワード関連でSEO的に広い守備範囲が保てる」とか「こうすることで、1つのキーワードで1,2位を独占できる」といった考えがあり、この考えがSEO優位な運用だと思い込んでいるようです。また、さすがに上記のような典型的な例ではないにせよ、つまるところ上記と変わらないような切り口で複数サイト運用しているのも多く存在していると思います。
しかしGoogleの中の人もよく言っていますが、こういったケースには「なぜひとつのサイトにまとめないのか」という疑念が湧くのです。そして私から言わせれば「もし、SEO上これが本当に正しいと思っているのであればそれは間違いですよ」ということです。
なぜいけないのか
いけない…というよりも、「正しいというのは間違い」という言い方のほうがニュアンスとしては適切かもしれません。なぜなら、SEO上のことだけを考えるならば、類似サイトを乱立させるより少なくとも1つのサイトにまとめた方が効果的だと考えられるからです。1社で類似サイトを複数運用するデメリットとしては(最低でも)以下が考えられます。
- せっかくのサイトパワーが分散(ドメインが強くならない)
- 検索結果の多様化から同じクエリで同じ運用元サイトをいくつも上位表示されない
- 施策キーワードでサイト同士がカニバリゼーションを起こしやすい
- SEO運用工数や改善チューニングが浅く広くなる
サイトパワーが分散されるのは当然です。せっかくのドメインに対してコンテンツ量や被リンク量も分散されてしまうでしょう。さらに、1サイト目を.co.jpで運用していて、2サイト目を.comで運用している例もあったりします。この場合、1サイト目も2サイト目も並列に扱うことになってしまい、.co.jpという信頼度の高いTLDにも関わらず、それを活かしきれていないケースもあります。そして、結局コーポレートサイトはまた別のドメインを使用することになるという…本末転倒な状況に陥ることだってあります。これではドメイン費も馬鹿になりません。なにより運営サイトとして、1つのブランド価値を大きく訴求できるチャンスが分散されてしまう懸念もございます。
それから、検索結果において上位表示1,2フィニッシュを得ることももうGoogleに期待しない方が良いでしょう。GoogleにはQDDと言って、検索結果を多角的に紹介しようとする働きがあります。実際、検索結果1ページには10枠のサイトページしか案内できません。その限られた枠数に同じ運営元のサイトページを複数出すことで、検索ユーザーへの選択肢を制限するということはGoogleにとって本意ではないわけです。ですので、同じ運営元で1,2フィニッシュを取ろうとする考えは改めた方が良いと思います。
また(それなら)運営元となる企業名を別名にして、サーバーやIPアドレスも変更させることで、別の運営元であるように演出すれば…という考えが起こると思いますが、それももはや意味がないと思います。似たような内容であれば、やはりGoogleからすれば複数サイトを上位表示させる必要も無いでしょう。検索上位表示されるのはオリジナルなコンテンツやサービスがあるサイトページだからです。それを2つ分考えるくらいなら、1つにしてもっと知恵を絞った方が良いはずです。
そして、その1,2フィニッシュを取ろうとするあまり、施策キーワードでサイト同士がカニバリゼーションを引き起こしやすいのも事実です。まさに「二兎を追う者は一兎をも得ず」です。いずれも山っ気を出したサイトのため差別化も図れなければパワーも分散され、団栗の背比べ状態になってしまいます。それが(結果的にあざとさに繋がったりもし)1つのキーワードで共食い状態になって正当な評価を受けられないことにもなります。
SEO運用工数や改善チューニングが広く浅くなる、というのは遠回しの言い方なだけで、要は複数サイトを運用していればその分、1つのサイトに対する運用が雑になるって話ですよね。1サイトあたりに深くコンテンツを追求するよりも、全体的にコーディングをチューニングする程度になってしまったりもします。だからと言ってそれぞれのサイトにそれぞれの担当者を就けても工数ばかりかかってしまいますよね。
サブディレクトリで展開することをオススメ
こうした理由からも、私は類似サイトを乱立させるより、しっかりと1つの大きなサイトにした方が良いと判断するわけです。そしてその類似サイト群をサブディレクトリ以下で存在させるようにしつつ、UIを最適に統一してあげることで、サイトパワーは増していくでしょう。
サブディレクトリではなく、サブドメインで管理するという考えもありますが、サブドメインは一応別サイトという判断をされます。ですので、余程大きなサイトにならない限り、1つのサイトとして捉えられるには時間と労力が掛かるでしょう。実際にサブドメインも含めて1つのサイトとして捉えられている大手サイトは数多くありますが…まぁ、サブドメインをどうしても希望する場合は、管理上とサーバー容量上(表示速度上)で判断していく感じですかね。ケースバイケースです。また、サブディレクトリでもGoogle Search Consoleには個別登録できますので、それぞれでしっかり効果検証したい場合でも有効です。
私は「SEO会社にこうすると良いって言われたんだけど…」と言われるケースが何度かありましたので、ここに備忘録的に記載しました。